ケアの現場で、なぜユーモアが大切なのか? 医療・介護から子育ての現場にも生かしたい柏木哲夫先生の最新刊「ユーモアを生きる」

『ユーモアを生きる―困難な状況に立ち向かう最高の処方箋』(四六版/172ページ/2019年3月発行/三輪書店刊)本体価格1,600円(税込み定価1,728円)

 日本の医療界でいち早くターミナルケアを実践した柏木哲夫さん(ホスピス財団理事長、大阪大学名誉教授、淀川キリスト教病院名誉ホスピス長)の最新刊『ユーモアを生きる―困難な状況に立ち向かう最高の処方箋』(三輪書店)は、互いの思いがすれ違い、ギクシャクしがちな人間関係を、柔らかく解きほぐしてくれる可能性を秘めたユーモアの大切さに気づかせてくれるエッセー本だ。

 ホスピスの現場で約2500人の人を看取った経験を持つ柏木さんは、医師としてのキャリアを精神科医としてスタート。1969年ワシントン大学に留学し、72年帰国後に勤務し始めた淀川キリスト教病院(大阪市東淀川区)にターミナルケア実践のためのチームを立ち上げ、84年にホスピスを開設した。1日に何人もの人を看取ったある日、新聞に載っていた川柳にクスッと笑えて心が少し軽くなった経験から、ユーモアへの関心が芽生え、自身も川柳を詠むようになったという。

 この経験を踏まえ、柏木さんは本書の中で「ユーモアのセンスは後天的に身につくもの」と述べている(だから「私にはユーモアのセンスがない」と嘆かなくても大丈夫!)。その方法はまず、ユーモアの大切さに「気づく」こと。そして、「日常生活での実践」を通じて徐々に「身につく」という。

 

 本書は2部構成で、第1幕は2017年9月から1年間『作業療法ジャーナル』に連載した「ユーモアと笑い」をもとに構成。第2幕は出版に当たって実施した二つの対談を収録している。対談相手は井上宏さん(関西大学名誉教授、「日本笑い学会」顧問)と、徳永進さん(鳥取・野の花診療所院長)だ。

 自身を「ものごとを分類して考える」タイプと分析する柏木さんは、臨床場面で経験した「ユーモアの大切さ」を「言語化して『どういうことがあるから大切なのだ』と見いだしたい」気持ちがあるそうだ。ユーモアの働き、ユーモアの諸相など、様々な角度から考察され、紹介されるエピソードには思わず頬が緩む。

 

 笑いが起こる家庭や職場は温かく、和やかなムードで人を包んでくれる。療養中の患者や家族はもちろん、医療や介護に従事している人、子育て中の保護者まで、誰かをケアしている人には、ぜひ読んで役立ててほしい。




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